TOBATA OTANIEN NEWSLETTER

戸畑大谷園通信

05
第5号|2026年11月号
発行:戸畑大谷園
デイサービスで職員が利用者の足元を見守る場面

第5号|今月の特集

冬に増える「足のむくみ」
様子見と相談の分かれ目

寒くなると外に出る機会が減り、座って過ごす時間が長くなります。夕方になると靴下の跡がくっきり残る、靴がきつい——そんな足のむくみは、多くは一晩休むと引いていきます。けれど中には、心臓の負担や、足の静脈にできる血のかたまりのサインが隠れていることもあります。見分ける手がかりと冷えの季節の養生を、理学療法士・鍼灸師の二つの視点でまとめました。

1119番…急な息苦しさ・胸の痛み
2急いで受診…片足だけ急に太くなった
3早めに主治医へ…数日で体重が増えた

P3-4

特集:冬の足のむくみと冷え

見分ける3つの手がかり・受診の目安・申し送り文例

P5-6

東洋医学の視点

二つの目で見る/冬と腎・水のめぐり/冬の養生に用いられる3つのツボ

P7-8

セルフケア・ご相談

座ったままできる足の運動と温め方/✂ むくみと冷えの観察チェック/読者Q&A・ご相談の窓口

村田幸俊

執筆・監修:村田 幸俊(理学療法士・鍼灸師)|園の中で、健康のご相談をお受けします

今月の視点
第5号今月の視点 / 監修者のご紹介TOBATA OTANIEN|2026.11
十一月

THIS MONTH

「いつものむくみ」の中に、
見逃したくないサインがあります

第5号をお届けします。立冬を過ぎると、園でも「夕方になると足がパンパンになる」「靴がきつい」という声が増えてきます。足のむくみはとてもよく見かける変化なので、つい「いつものこと」と受け流してしまいがちです。けれど同じむくみでも、片足だけなのか、急に増えたのか、息切れを伴っていないかで、意味は大きく変わります。毎日足元を見ている皆さまの「いつもと違う」が、いちばんの手がかりです。

村田幸俊

執筆・監修

村田 幸俊むらた ゆきとし

理学療法士 鍼灸師

理学療法士として体の動き・筋力・関節の状態を見つめ、鍼灸師として東洋医学の視点から体全体のめぐりを整えることを大切にしています。体の動きと、東洋医学でいう気血水(き・けつ・すい)のめぐり——二つの目で見ることで、見えにくかった背景に気づけることがあります。あせらず、その方の暮らしに沿って丁寧に向き合うことを心がけています。

おもな資格・活動
  • 理学療法士/鍼灸師(運動・リハビリと鍼灸の両面から身体を診る)
  • 北九州市鍼灸マッサージ師会 広報部長
  • MOVEリハビリテーション研究会 運営(研究会・多職種交流会を複数主催)
こんな時はご相談ください
  • 両足のむくみが続き、靴がきつい
  • 座りがちで、歩く量が減ってきた
  • 足が冷えて眠りにくいと言う
今号の使い方(3ステップ)
  • ① 表紙の3段階(119番/急いで受診/早めに主治医)を覚える
  • ② 気になる方がいたら、P4の目安と「だれに」で連絡
  • ③ P7のチェック表をコピーして、送迎・入浴の時に持ち歩く
園でケアマネジャーの相談を受ける場面
02
特集
特集冬の足のむくみと冷え ①(西洋医学の目で)TOBATA OTANIEN|2026.11
01

FEATURE

冬は「冷え」と「むくみ」が重なる季節

むくみ(浮腫=ふしゅ)は、皮膚の下に水分がたまった状態です。夕方に足がむくみ、朝には引いている——という軽いむくみは、座ったり立ったりの時間が長い日によく見られます。寒い季節は歩く量が減り、座ったまま過ごす時間が長くなりがちです。

カイロや湯たんぽを使う機会が増えると、気をつけたいのが低温やけどです。消費者庁に寄せられた65歳以上の低温やけど119件のうち、10件(8.4%)は入院が必要でした。

65歳以上の低温やけど事故の原因製品の棒グラフ

65歳以上の低温やけど事故の原因製品(上位4つ・件数)。出典:消費者庁「高齢者のやけどに御注意ください!」(2015年。事実関係が未確認の事例を含む)

44℃

この温度でも3〜4時間で
低温やけどになるとされます

46℃では30分〜1時間、50℃では2〜3分とも。安全に使える時間の目安ではありません。出典:消費者庁(2015年)

現場で見る3つのサイン
  • 足元…靴下のゴムの跡が深く残る・靴がきつい・すねを押すと跡が残る
  • 左右…片方の足だけが太い・赤い・熱をもっている
  • 体の様子…数日で体重が増えた・少し動くと息が切れる・横になると苦しそう

片足だけの急な腫れはP4の目安へ。ほかは続く時に記録を。

むくみの背景① 病気とお薬
  • 心臓・腎臓・肝臓の病気…両足に広く出る
  • 低栄養…血液のたんぱく質が足りない
  • お薬…一部の血圧の薬・痛み止め・神経痛の薬・ステロイド・甘草を含む漢方薬など。薬が始まった・増えたあとのむくみは、主治医・薬剤師へ(自己判断で中止しない)

出典:MSDマニュアル「浮腫」ほか

むくみの背景② 暮らし
  • 座りっぱなし…ふくらはぎの筋肉が動かず、血液や水分が心臓に戻りにくく
  • いすで眠り込む…足を下ろしたままで、足元にたまりやすく
  • 味の濃い食事…塩分は水分をためこむもとに
  • むくみを減らそうと自己判断で水分を控えない(量は主治医の指示どおりに)

※ 受診の判断は主治医・看護師へ。座り方・動き方のご相談は、園の理学療法士・鍼灸師へ。

03
特集
特集冬の足のむくみと冷え ②(見分け方と申し送り)TOBATA OTANIEN|2026.11
受診・相談の目安
  • ためらわず119番…胸の痛み・強い息苦しさ・意識が遠のく/座っていても苦しい・会話が続かない・唇が紫色/片足の腫れがある方が、急に息苦しい・胸が痛い(足の血のかたまりが肺へ流れたサインのことがあります)
  • 急いで受診を…片方の脚が急に腫れた・太くなった(痛みがなくても。赤み・熱感があればなおさら)
  • その日のうちに主治医へ…横になると息苦しく、座ると楽になる/夜、咳が出て眠れない
  • 早めに主治医へ…2〜3日で体重が2kgほど増えた/むくみが日ごとに増える/以前より短い距離で息が切れる
  • だれに…デイ・施設では看護師へ。在宅ではご家族やケアマネジャーから主治医へ。迷う時は#7119へ(福岡県・24時間・看護師が助言)

体重の目安を主治医から指示されている方は、その指示を優先。出典:厚生労働省「深部静脈血栓症/肺塞栓症の予防Q&A」、MSDマニュアル家庭版「むくみ」、医療機関の患者向け資料(体重の目安の一例)

むくみを見分ける3つの手がかり

むくみを見分ける3つの手がかり

両足のむくみは、すねの骨の上を親指で10秒ほど押し、離したあとのへこみを見ます

両足に同じように出る痛みのないむくみは、座りっぱなしやお薬、心臓・腎臓など体全体の水分の問題で起こることが多いとされます。片方の足だけが急に腫れた時は、痛みがなくても、足の静脈に血のかたまりができる深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)などの可能性があり、急いで受診を。寝ている時間が長い方、手術や入院のあとは特に注意。片まひの方はまひ側がふだんからむくみやすいので、いつもの左右差より急に増えていないかを見ます。体重は朝・トイレのあと・同じ服装で。(出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「浮腫」)

申し送りの文例(記入式)

観察できた項目だけ記入。急ぎ度は上の目安で。

「[ ]月[ ]日
・むくみ[右・左・両方]、押した跡[あり・なし]、痛み・赤み[あり・なし]
・体重[ ]kg([ ]日前[ ]kg)
・息切れ・横になると苦しい[あり・なし]
・新しい薬・量の変更[あり・なし]
(測れた日は 脈・SpO2=血液中の酸素 も)」

ご家族・ご本人に伝える一言

「むくみは足だけのことに見えて、心臓や血管の様子が表れていることがあります。片方の足だけ急に太くなった時は、もまずに急いで知らせてください。急に体重が増えて息が切れる時も早めに」——「年のせい」と思われているご家族に。

04
東洋医学
連載東洋医学の視点 ①TOBATA OTANIEN|2026.11
02

SERIES|理学療法士 × 鍼灸師の目で

冬の冷えとむくみを「腎」で読みとく

ここからは鍼灸師の視点です。東洋医学では、冬の寒さ(寒邪=かんじゃ)が体を温める力を弱らせ、水分のめぐりも滞らせると考えます。土台は経絡治療(けいらくちりょう=脈を診て、足りない所を補う古典鍼灸)の見立てです。「腎」「脾」は臓器そのものではなく、体のはたらきをまとめた考え方です。

介護の現場では(まずここだけでも)
  • 足元と腰を冷やさない声かけ(靴下・ひざ掛け・腹巻き)
  • 温かい飲み物を、少しずつこまめに
  • 「足が冷たい」という訴えも、むくみと一緒に記録に
理学療法士の目

「夕方になると足がむくんで、靴がきつい」を、座っている時間と歩く量、足首の硬さ、いすの高さ(足裏が床につくか・ももの裏が座面に押されていないか)で見ます。左右差・押した跡・体重も確かめ、病気が疑われる時は主治医・看護師へつなぎます。

×
鍼灸師の目

冬は脈に、腎(じん)の経絡の力が足りない様子(腎虚=じんきょ)が表れやすく、温める力が弱って水(すい)をめぐらせきれず、足元にたまった状態と見立てます。水をさばく脾(ひ)の経絡と、足先の冷えもあわせて診ます。

冬は「腎」の季節

季節と五臓(ごぞう=体のはたらきの分け方)を結びつけると、冬は「水(すい)」、主るのは腎。年齢とともに弱りやすいと考えます。

五行と五臓(冬=水・腎)

冬=水・腎。五行の「水」は季節の分類の言葉です

水がめぐる道

水は脾がさばき、腎の温める力でめぐると考えます。冷えて腎が弱ると、足元にたまりやすいとされます。

水がめぐる流れ(脾がさばき腎の温める力でめぐる)

水は脾がさばき、腎の温める力でめぐる(東洋医学の考え方のイメージ)

今月の東洋医学ミニ用語|腎(じん)

腎臓だけでなく、足腰・水分の調整・体を温める力のもとをまとめて指す考え方です。「腎が弱る」と、足腰の冷え・むくみ・夜中のトイレ(急に増えた時は主治医へ)として現れるとされます。※ 東洋医学の考え方のご紹介です。個人差があります。

05
東洋医学
連載東洋医学の視点 ② ― 冬の養生に用いられる3つのツボと食養生TOBATA OTANIEN|2026.11
冬の冷えとむくみに用いられるツボ養生

「足先が冷える」「夕方むくむ」時の養生に用いられる、脚の3つのツボです。ご本人が、またはご家族が手を添えて、心地よい所から。介護職の方は押すよりも、足元を温める声かけを。

冬の養生に用いられるツボの位置図(復溜・委中・太衝)

図はおおよその位置。正確な位置は下の説明を

  • 復溜(ふくりゅう)/内くるぶしから指3本上・アキレス腱の前/冷えとむくみに(腎を補うツボ)
  • 委中(いちゅう)/膝の裏のしわの中央/脚のだるさに
  • 太衝(たいしょう)/足の甲・親指と人さし指の骨の間/足先の冷えに

押し方=気持ちよい程度に、息を吐きながら5秒ほど。むくんだ所はさする程度に。ツボは薬の代わりではありません。

ツボを押さない・弱めるとき
  • 片足が急に腫れた・血栓が疑われる…どのツボも押さず、急いで受診
  • 寝ている時間が長い・手術や骨折のあと・血栓や静脈瘤がある…ふくらはぎと膝の裏は押さない
  • 血液をサラサラにする薬・足の感覚が鈍い・痛みを伝えにくい…強く押さない(さする程度)
冬の『黒い』食材と、温める食材
  • 塩分・水分・カリウム・リンの制限がある方は、主治医・管理栄養士の指示を優先
  • ワルファリンを飲んでいる方は、海藻や緑の濃い野菜を急に増やさない
  • 東洋医学では冬・腎に合う色は黒。黒豆・黒ごま・ひじき・黒きくらげなど
  • 東洋医学で温める性質とされる食材は、しょうが・ねぎ・にら・シナモンなど。温かい煮物や、具の多い薄味の汁物で
  • 飲み込みに不安のある方は、専門職が決めた食事の形に合わせて
冬の温かい食卓の場面
こんな時の養生から

足先が冷える時は太衝/夕方のむくみには復溜/脚が重だるい時は委中から。腰や下腹の冷えは、押すより腹巻きやひざ掛けで温めて。急に増えたむくみ・片足だけの腫れ・息切れは、ツボではなく医療者へ。

ツボ養生のQ&A

Q. お風呂あがりに押してもよい?

A. 体が温まって力が抜けている入浴後は向いていると言われています。体が冷えないうちに、靴下をはいてから。のぼせ・ふらつき・発熱時、飲酒後は避けます。

06
セルフケア
今日からできる足を動かし、上手に温めるTOBATA OTANIEN|2026.11
03

SELF CARE

座ったままの「足の運動」と、上手な温め方

座ったままできる足の運動(1時間に1回を目安に)

背もたれのある、安定したいすに深く腰かけて行います。

座ったままできる足の運動3つ

足の指とふくらはぎを動かし、立てる方は付き添いのもとで少し歩きます

  • ① グー・パー…足の指をにぎって、ひらく。ゆっくり5〜10回
  • ② かかとの上げ下げ…つま先を床につけたまま、かかとをゆっくり上げて下ろす。10回ほど
  • ③ 少し歩く…ひじ掛けを持ってゆっくり立ち、ふらつきがないか確かめてから、ふだんの歩き方(杖・歩行器・付き添い)で3〜5分
  • 片まひの方は動く側の足で。認知症の方には職員が見本を見せて一緒に
  • 片足が急に腫れた時は、運動もマッサージもせず連絡を。痛み・強い息切れが出たら中止

出典:厚生労働省「エコノミークラス症候群」予防Q&Aほか

温めるときの注意(低温やけど)
  • 湯たんぽ・あんかは、布団が温まったら布団から出す
  • 寝るときはカイロを使わない。電気毛布は高温で使い続けない
  • カバーやタオルで包んでも、長く当て続けると低温やけどは起こります
  • 足の感覚が鈍い方(糖尿病・まひ)、睡眠薬・安定剤を飲んでいる方は特に注意。自分で寝返りできない方には湯たんぽ・あんかを使わず、こたつで眠り込まないよう声かけを

出典:消費者庁「高齢者のやけどに御注意ください!」(2015年)、NITE(製品評価技術基盤機構)の注意喚起

現場で使える『足のむくみと冷えの観察チェック』 ✂ コピー・切り取って持ち歩けます / 利用者[    ] 記入日[    ] 記入者[    ]

足元の観察

① 左右の足の太さに差がある
② すねを押すと跡が残る
③ 朝になってもむくみが引かない
④ 靴や靴下がきつくなった
⑤ 体重が数日で増えた

あわせて確認

少し動くと息が切れる・横になると苦しそう
足が冷たい・色が悪い
湯たんぽやカイロを長く当てている
最近、薬が始まった・量が変わった

ひとつでも当てはまれば看護師へ共有を。観察の目安で、診断の基準ではありません。①の片足の急な腫れは、痛みがなくても急いで受診を(その足は②のように押さない)。⑤と息切れが重なる時はその日のうちに主治医へ。急な息苦しさ・胸の痛みは119番(P4)。ほかは日付とあわせて記録し、共有を。

07

ご相談・多職種連携のご案内/コラムへのご要望

INFORMATION
ご利用者のことで気になる時は

「夕方になると足がむくむ」「足が冷えて眠りにくい」など気になる変化があれば、主治医・看護師・ケアマネジャーのみなさまと一緒に、園の理学療法士・鍼灸師として体の状態を確認します。座り方・歩き方・足の動かし方のご相談もどうぞ。みなさまの見守りを支える一員として関われれば幸いです。

コラムのご要望 リクエストフォームQR
お問い合わせ・連携のご相談
戸畑大谷園(担当:村田 幸俊)
TEL:093-883-0622
QR=コラムのご要望・取り上げてほしいテーマ受付
読者Q&A

Q. むくんでいる時は、足を高くして休んだ方がよいのでしょうか?

A. 座りっぱなしでたまった軽いむくみなら、足台やクッションで少し高くすると楽になることがあります(出典:MSDマニュアル家庭版「むくみ」)。
上げる前に主治医へ確認したい方…心臓の病気で治療中・横になると息苦しい・足先が冷たく色が悪い。
上げずに受診を…片足だけ急に腫れた時。
弾性ストッキングも医師の指示で使います。

📮 ご質問・ご要望を募集しています

取り上げてほしいテーマや日ごろの疑問を、上のQR(または戸畑大谷園)へお寄せください。いただいた声は次号以降でお答えします。みなさまと一緒に育てていく通信です。

次号(12月号)予告
ヒートショックと冬の入浴の見守り。脱衣所・浴室の寒さと、入浴前後に見ておきたいことをまとめます。

朝、家族と体重を記録する場面
毎朝の体重の記録が、むくみの変化に気づく手がかりになります。
戸畑大谷園 特別養護老人ホーム/デイサービス
TEL 093-883-0622
〒804-0032 北九州市戸畑区西大谷1-6-22/発行 戸畑大谷園・2026年11月1日(第5号・毎月1日発行)/執筆・監修:村田 幸俊(理学療法士・鍼灸師)/次号予告:ヒートショックと冬の入浴の見守り(予定)
バックナンバー:創刊号(7月)室内で起こる熱中症の見守り / 第2号(8月)夏バテ・食欲低下と低栄養 / 第3号(9月)夏の服薬管理と脱水・ふらつき / 第4号(10月)秋の乾燥と口腔ケア・誤嚥 / 過去号は右のQRで
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