TOBATA OTANIEN NEWSLETTER
第5号|今月の特集
寒くなると外に出る機会が減り、座って過ごす時間が長くなります。夕方になると靴下の跡がくっきり残る、靴がきつい——そんな足のむくみは、多くは一晩休むと引いていきます。けれど中には、心臓の負担や、足の静脈にできる血のかたまりのサインが隠れていることもあります。見分ける手がかりと冷えの季節の養生を、理学療法士・鍼灸師の二つの視点でまとめました。
P3-4
特集:冬の足のむくみと冷え
見分ける3つの手がかり・受診の目安・申し送り文例
P5-6
東洋医学の視点
二つの目で見る/冬と腎・水のめぐり/冬の養生に用いられる3つのツボ
P7-8
セルフケア・ご相談
座ったままできる足の運動と温め方/✂ むくみと冷えの観察チェック/読者Q&A・ご相談の窓口
執筆・監修:村田 幸俊(理学療法士・鍼灸師)|園の中で、健康のご相談をお受けします
THIS MONTH
第5号をお届けします。立冬を過ぎると、園でも「夕方になると足がパンパンになる」「靴がきつい」という声が増えてきます。足のむくみはとてもよく見かける変化なので、つい「いつものこと」と受け流してしまいがちです。けれど同じむくみでも、片足だけなのか、急に増えたのか、息切れを伴っていないかで、意味は大きく変わります。毎日足元を見ている皆さまの「いつもと違う」が、いちばんの手がかりです。
執筆・監修
村田 幸俊むらた ゆきとし
理学療法士として体の動き・筋力・関節の状態を見つめ、鍼灸師として東洋医学の視点から体全体のめぐりを整えることを大切にしています。体の動きと、東洋医学でいう気血水(き・けつ・すい)のめぐり——二つの目で見ることで、見えにくかった背景に気づけることがあります。あせらず、その方の暮らしに沿って丁寧に向き合うことを心がけています。
FEATURE
むくみ(浮腫=ふしゅ)は、皮膚の下に水分がたまった状態です。夕方に足がむくみ、朝には引いている——という軽いむくみは、座ったり立ったりの時間が長い日によく見られます。寒い季節は歩く量が減り、座ったまま過ごす時間が長くなりがちです。
カイロや湯たんぽを使う機会が増えると、気をつけたいのが低温やけどです。消費者庁に寄せられた65歳以上の低温やけど119件のうち、10件(8.4%)は入院が必要でした。
65歳以上の低温やけど事故の原因製品(上位4つ・件数)。出典:消費者庁「高齢者のやけどに御注意ください!」(2015年。事実関係が未確認の事例を含む)
この温度でも3〜4時間で
低温やけどになるとされます
46℃では30分〜1時間、50℃では2〜3分とも。安全に使える時間の目安ではありません。出典:消費者庁(2015年)
片足だけの急な腫れはP4の目安へ。ほかは続く時に記録を。
出典:MSDマニュアル「浮腫」ほか
※ 受診の判断は主治医・看護師へ。座り方・動き方のご相談は、園の理学療法士・鍼灸師へ。
体重の目安を主治医から指示されている方は、その指示を優先。出典:厚生労働省「深部静脈血栓症/肺塞栓症の予防Q&A」、MSDマニュアル家庭版「むくみ」、医療機関の患者向け資料(体重の目安の一例)
両足のむくみは、すねの骨の上を親指で10秒ほど押し、離したあとのへこみを見ます
両足に同じように出る痛みのないむくみは、座りっぱなしやお薬、心臓・腎臓など体全体の水分の問題で起こることが多いとされます。片方の足だけが急に腫れた時は、痛みがなくても、足の静脈に血のかたまりができる深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)などの可能性があり、急いで受診を。寝ている時間が長い方、手術や入院のあとは特に注意。片まひの方はまひ側がふだんからむくみやすいので、いつもの左右差より急に増えていないかを見ます。体重は朝・トイレのあと・同じ服装で。(出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「浮腫」)
観察できた項目だけ記入。急ぎ度は上の目安で。
「[ ]月[ ]日
・むくみ[右・左・両方]、押した跡[あり・なし]、痛み・赤み[あり・なし]
・体重[ ]kg([ ]日前[ ]kg)
・息切れ・横になると苦しい[あり・なし]
・新しい薬・量の変更[あり・なし]
(測れた日は 脈・SpO2=血液中の酸素 も)」
「むくみは足だけのことに見えて、心臓や血管の様子が表れていることがあります。片方の足だけ急に太くなった時は、もまずに急いで知らせてください。急に体重が増えて息が切れる時も早めに」——「年のせい」と思われているご家族に。
SERIES|理学療法士 × 鍼灸師の目で
ここからは鍼灸師の視点です。東洋医学では、冬の寒さ(寒邪=かんじゃ)が体を温める力を弱らせ、水分のめぐりも滞らせると考えます。土台は経絡治療(けいらくちりょう=脈を診て、足りない所を補う古典鍼灸)の見立てです。「腎」「脾」は臓器そのものではなく、体のはたらきをまとめた考え方です。
「夕方になると足がむくんで、靴がきつい」を、座っている時間と歩く量、足首の硬さ、いすの高さ(足裏が床につくか・ももの裏が座面に押されていないか)で見ます。左右差・押した跡・体重も確かめ、病気が疑われる時は主治医・看護師へつなぎます。
冬は脈に、腎(じん)の経絡の力が足りない様子(腎虚=じんきょ)が表れやすく、温める力が弱って水(すい)をめぐらせきれず、足元にたまった状態と見立てます。水をさばく脾(ひ)の経絡と、足先の冷えもあわせて診ます。
季節と五臓(ごぞう=体のはたらきの分け方)を結びつけると、冬は「水(すい)」、主るのは腎。年齢とともに弱りやすいと考えます。
冬=水・腎。五行の「水」は季節の分類の言葉です
水は脾がさばき、腎の温める力でめぐると考えます。冷えて腎が弱ると、足元にたまりやすいとされます。
水は脾がさばき、腎の温める力でめぐる(東洋医学の考え方のイメージ)
腎臓だけでなく、足腰・水分の調整・体を温める力のもとをまとめて指す考え方です。「腎が弱る」と、足腰の冷え・むくみ・夜中のトイレ(急に増えた時は主治医へ)として現れるとされます。※ 東洋医学の考え方のご紹介です。個人差があります。
「足先が冷える」「夕方むくむ」時の養生に用いられる、脚の3つのツボです。ご本人が、またはご家族が手を添えて、心地よい所から。介護職の方は押すよりも、足元を温める声かけを。
図はおおよその位置。正確な位置は下の説明を
押し方=気持ちよい程度に、息を吐きながら5秒ほど。むくんだ所はさする程度に。ツボは薬の代わりではありません。
足先が冷える時は太衝/夕方のむくみには復溜/脚が重だるい時は委中から。腰や下腹の冷えは、押すより腹巻きやひざ掛けで温めて。急に増えたむくみ・片足だけの腫れ・息切れは、ツボではなく医療者へ。
Q. お風呂あがりに押してもよい?
A. 体が温まって力が抜けている入浴後は向いていると言われています。体が冷えないうちに、靴下をはいてから。のぼせ・ふらつき・発熱時、飲酒後は避けます。
SELF CARE
背もたれのある、安定したいすに深く腰かけて行います。
足の指とふくらはぎを動かし、立てる方は付き添いのもとで少し歩きます
出典:厚生労働省「エコノミークラス症候群」予防Q&Aほか
出典:消費者庁「高齢者のやけどに御注意ください!」(2015年)、NITE(製品評価技術基盤機構)の注意喚起
足元の観察
あわせて確認
ひとつでも当てはまれば看護師へ共有を。観察の目安で、診断の基準ではありません。①の片足の急な腫れは、痛みがなくても急いで受診を(その足は②のように押さない)。⑤と息切れが重なる時はその日のうちに主治医へ。急な息苦しさ・胸の痛みは119番(P4)。ほかは日付とあわせて記録し、共有を。
「夕方になると足がむくむ」「足が冷えて眠りにくい」など気になる変化があれば、主治医・看護師・ケアマネジャーのみなさまと一緒に、園の理学療法士・鍼灸師として体の状態を確認します。座り方・歩き方・足の動かし方のご相談もどうぞ。みなさまの見守りを支える一員として関われれば幸いです。
Q. むくんでいる時は、足を高くして休んだ方がよいのでしょうか?
A. 座りっぱなしでたまった軽いむくみなら、足台やクッションで少し高くすると楽になることがあります(出典:MSDマニュアル家庭版「むくみ」)。
上げる前に主治医へ確認したい方…心臓の病気で治療中・横になると息苦しい・足先が冷たく色が悪い。
上げずに受診を…片足だけ急に腫れた時。
弾性ストッキングも医師の指示で使います。
取り上げてほしいテーマや日ごろの疑問を、上のQR(または戸畑大谷園)へお寄せください。いただいた声は次号以降でお答えします。みなさまと一緒に育てていく通信です。
次号(12月号)予告
ヒートショックと冬の入浴の見守り。脱衣所・浴室の寒さと、入浴前後に見ておきたいことをまとめます。