TOBATA OTANIEN NEWSLETTER
創刊号|今月の特集
夏の熱中症は、屋外だけでなくご自宅の室内でも多く起こると言われています。気づきにくいサインと、その日からできる見守りを、理学療法士・鍼灸師の二つの視点でまとめました。
P3-4
特集:室内熱中症の見守り
なぜ室内で起こるか/3つのサイン・受診の目安・応急
P5-6
東洋医学の視点
二つの目で見る/気血水・五臓/夏の養生のツボと食
P7-8
セルフケア・ご相談
室内環境チェック/読者Q&A/ご相談・連携の窓口
執筆・監修:村田 幸俊(理学療法士・鍼灸師)|園の中で、健康のご相談をお受けします
GREETING
はじめまして。戸畑大谷園で理学療法士・鍼灸師として関わっております、村田幸俊と申します。ケアマネジャーや看護師のみなさまと接するなかで、「体のちょっとした変化を、どう見て、どう伝えればよいか」という声を多くいただいてきました。そこで、季節ごとに気をつけたい体の話題を、専門職のみなさまがそのまま現場で使える形でお届けしようと、この通信を始めます。売り込みのための便りではありません。まずはみなさまの見守りに役立つ情報を第一に、西洋医学(リハビリ)と東洋医学(鍼灸)の二つの視点から、毎号お伝えしてまいります。
執筆・監修
村田 幸俊むらた ゆきとし
理学療法士として体の動き・筋力・関節の状態を見つめ、鍼灸師として東洋医学の視点から体全体のめぐりを整えることを大切にしています。体の動きと、東洋医学でいう気血水(き・けつ・すい)のめぐり――二つの目で見ることで、見えにくかった背景に気づけることがあります。あせらず、その方の暮らしに沿って丁寧に向き合うことを心がけています。
同じ「だるさ」「むくみ」でも、リハビリの目は筋力・関節・血圧・動きの数値で、鍼灸の目は気血水・五臓のめぐりで見ます。両方の目で見ることで背景に気づき、日々の養生の引き出しが増えます。園のなかで、気軽にご相談いただける立場でいたいと思っています。
FEATURE
熱中症というと炎天下のイメージがありますが、実際にはご自宅の室内でも少なくありません。全国の救急搬送を発生場所別に見ると、「住居」がもっとも多くなっています。
とくに高齢の方は、暑さや口の渇きを感じにくく、エアコンを控えがちで、室内でも体に熱がこもりやすいと言われています。だからこそ、周りの見守りが大切になります。
熱中症による救急搬送の発生場所別の割合(住居が最多)。出典:総務省消防庁「令和7年(5〜9月)の熱中症による救急搬送状況」
救急搬送の発生場所は
「住居」が最多
屋外だけでなく、室内での見守りが欠かせません。
高齢の方は「暑い」「のどが渇いた」と訴えないことがあります。本人の申告よりも、周りの気づきが大切です。
※ 持病のある方は、主治医や看護師の指示を優先してください。
判断に迷うときは、救急安心センター事業「#7119」に相談できます(対応地域)。急な変化は、ためらわず119番へ。
体を冷やすとよい3か所。太い血管が通る場所を冷やすと効果的です
「暑さは我慢しないで大丈夫ですよ。のどが渇く前の一口と、時間を決めた冷房で、この夏も元気に過ごしましょう」——遠慮しがちな方には、こう声をかけると安心につながります。ご家族にも、こまめな声かけと見守りをお願いしておくと安心です。
応急のあとに急に悪くなることもあります。受け答え・汗・顔色・体温を続けて見守り、良くならない・くり返す時は早めに受診を。ご家族にも「様子が戻っても、しばらくは見ていてください」とひとこと添えると安心です。
「室温・湿度と飲水量を毎日確認。倦怠感・食欲低下・ふらつきの有無を観察。エアコン使用状況を家族と共有し、変化時は受診勧奨。」 水分・塩分の摂取量や冷房の使用時間も添えておくと、次の担当への連携がスムーズです。
SERIES|理学療法士 × 鍼灸師の目で
ここからは、鍼灸師としての東洋医学の視点を加えます。東洋医学では、夏の強い暑さは「気(き=体を動かすエネルギー)」と「津液(しんえき=体のうるおい)」を消耗させ、だるさ・食欲の落ち・寝つきの悪さにつながると考えます。「二つの目」で見ると、夏バテの背景(消耗)と、日々の養生の両方に気づけます。
暑さで活動量が落ち、水分不足からくる血圧の変動・ふらつき・筋力低下として現れていないかを、動きと数値で見ます。
同じだるさを、汗による「気」と「うるおい」の消耗のサインと見立て、消耗を補う養生とめぐりを整える視点で見ます。
体は「気・血・水(き・けつ・すい)」の3つがめぐって保たれると考えます。夏は汗とともに気とうるおいが失われやすく、めぐりが細くなると、だるさ・動悸・寝つきの悪さとして現れると言われています。
気・血・水がめぐって体を保つ
夏は五臓の「心(しん)」が高ぶりやすい季節と考えます。あわせて「脾胃(ひい=胃腸)」は気血をつくる大もと。冷たい飲食で脾胃を冷やさないことが、夏の養生の基本です。
五行と五臓。夏=火・心(しん)
気(=元気・エネルギー)が不足した状態を指す言葉です。夏は汗で気を消耗しやすく、「疲れやすい・食欲が落ちる・声に力が出ない」といった様子で現れると考えられています。休息と、次のページの養生が助けになると言われています。※ 東洋医学の考え方の紹介です。持病・服薬中の方は主治医・鍼灸師にご相談ください。
夏の疲れやだるさ、寝苦しさには、道具のいらないツボ養生も助けになると言われています。ご本人と一緒に、心地よい所から試してみてください。
図はおおよその位置。正確な位置は下の説明を
押し方=気持ちよい程度に、息を吐きながら5秒ほどゆっくり。強く揉みません。妊娠中の方、血が止まりにくい方、皮膚に傷や異常がある部位は避け、持病・服薬中の方は主治医・鍼灸師にご相談を。ツボは薬の代わりではありません。
まずは1つ、心地よい所から。
こまめに(のどが渇く前に)コップ1杯を。たくさん汗をかいた時は、水分に加えて塩分も。経口補水液や、麦茶+少量の塩・梅干しなどが手軽です。
※ 心臓・腎臓の病気などで水分・塩分の制限がある方は、必ず主治医の指示を優先してください。
Q. いつ・どのくらいが目安?
A. 体が温まった入浴後が向いています。1か所、息を吐きながら5秒ほどを2〜3回。心地よい圧で、痛がる時・発熱時・飲酒後は避けて。
SELF CARE
左から 足首の上げ下げ(脚のむくみ・血のめぐり)/肩まわし(肩・首のこわばり)/深呼吸(のぼせ・気の高ぶりを鎮める)
無理のない範囲で。痛み・強い息切れがあれば中止し、主治医の指示を優先してください。
気になる変化があれば、主治医・看護師・ケアマネのみなさまと一緒に、園の理学療法士・鍼灸師として体の状態を確認します。転びにくい動き方や声かけのコツも、どうぞ一緒に。あくまで、みなさまの見守りを支える一員として関われれば幸いです。
Q. 「暑くない」と言ってエアコンを使ってくれません。
A. 高齢の方は暑さを感じにくいことがあります。「暑いから」ではなく「時間を決めた習慣」として「昼の◯時〜◯時はつけましょう」と一緒に決めると受け入れられやすく、温湿度計を見える所に置くのも一つの方法です。
取り上げてほしいテーマや日ごろの疑問を、上のQR(または戸畑大谷園)へお寄せください。いただいた声は次号以降でお答えします。みなさまと一緒に育てていく通信です。
創刊号をお届けできて、ほっとしています。「室内なのに熱中症で…」という声を毎年うかがいます。この一枚が、みなさまの見守りの小さな助けになればうれしいです。(村田)