TOBATA OTANIEN NEWSLETTER

戸畑大谷園通信

01
創刊号|2026年7月号
発行:戸畑大谷園
夏の室内で過ごす高齢者

創刊号|今月の特集

室内で起こる
熱中症の見守り

夏の熱中症は、屋外だけでなくご自宅の室内でも多く起こると言われています。気づきにくいサインと、その日からできる見守りを、理学療法士・鍼灸師の二つの視点でまとめました。

1熱中症は「室内」でも
多く起こると言われる
2本人の申告より、
周りの気づきが大切
3冷房・水分・声かけと、
相談の目安

P3-4

特集:室内熱中症の見守り

なぜ室内で起こるか/3つのサイン・受診の目安・応急

P5-6

東洋医学の視点

二つの目で見る/気血水・五臓/夏の養生のツボと食

P7-8

セルフケア・ご相談

室内環境チェック/読者Q&A/ご相談・連携の窓口

村田幸俊

執筆・監修:村田 幸俊(理学療法士・鍼灸師)|園の中で、健康のご相談をお受けします

ごあいさつ
創刊号ごあいさつ / 監修者のご紹介TOBATA OTANIEN|2026.07
創刊

GREETING

この一枚が、毎日の見守りの
そっとした助けになるように

はじめまして。戸畑大谷園で理学療法士・鍼灸師として関わっております、村田幸俊と申します。ケアマネジャーや看護師のみなさまと接するなかで、「体のちょっとした変化を、どう見て、どう伝えればよいか」という声を多くいただいてきました。そこで、季節ごとに気をつけたい体の話題を、専門職のみなさまがそのまま現場で使える形でお届けしようと、この通信を始めます。売り込みのための便りではありません。まずはみなさまの見守りに役立つ情報を第一に、西洋医学(リハビリ)と東洋医学(鍼灸)の二つの視点から、毎号お伝えしてまいります。

村田幸俊

執筆・監修

村田 幸俊むらた ゆきとし

理学療法士 鍼灸師

理学療法士として体の動き・筋力・関節の状態を見つめ、鍼灸師として東洋医学の視点から体全体のめぐりを整えることを大切にしています。体の動きと、東洋医学でいう気血水(き・けつ・すい)のめぐり――二つの目で見ることで、見えにくかった背景に気づけることがあります。あせらず、その方の暮らしに沿って丁寧に向き合うことを心がけています。

おもな資格・活動
  • 理学療法(運動・リハビリ)と鍼灸の両面から身体を診る
  • 北九州市鍼灸マッサージ師会 広報部長
  • MOVEリハビリテーション研究会 運営(研究会・多職種交流会を複数主催)
園でよくお受けするご相談
  • 足のむくみ・冷え/歩きにくさ・ふらつき
  • 肩・腰・膝の痛みやこわばり
  • 夏場の食欲・活動量の低下、寝つきの悪さ
二つの資格だからできること

同じ「だるさ」「むくみ」でも、リハビリの目は筋力・関節・血圧・動きの数値で、鍼灸の目は気血水・五臓のめぐりで見ます。両方の目で見ることで背景に気づき、日々の養生の引き出しが増えます。園のなかで、気軽にご相談いただける立場でいたいと思っています。

02
特集
特集室内熱中症の見守り ①(西洋医学の目で)TOBATA OTANIEN|2026.07
01

FEATURE

なぜ「室内」で熱中症が起こるのか

熱中症というと炎天下のイメージがありますが、実際にはご自宅の室内でも少なくありません。全国の救急搬送を発生場所別に見ると、「住居」がもっとも多くなっています。

とくに高齢の方は、暑さや口の渇きを感じにくく、エアコンを控えがちで、室内でも体に熱がこもりやすいと言われています。だからこそ、周りの見守りが大切になります。

熱中症の発生場所別の割合グラフ

熱中症による救急搬送の発生場所別の割合(住居が最多)。出典:総務省消防庁「令和7年(5〜9月)の熱中症による救急搬送状況」

約38%

救急搬送の発生場所は
「住居」が最多

屋外だけでなく、室内での見守りが欠かせません。

現場で見る「3つのサイン」
  • いつもと様子が違う…ぼんやり・受け答えが遅い・元気がない
  • 体のサイン…顔が赤い/皮膚が熱く乾いている・汗が急に止まる・脈が速い
  • 訴え…頭痛・吐き気・めまい・足がつる・力が入らない

高齢の方は「暑い」「のどが渇いた」と訴えないことがあります。本人の申告よりも、周りの気づきが大切です。

室内でできる予防のひと工夫
  • 気温だけでなく湿度も確認(目安:室温28℃以下・湿度70%以下と言われています)
  • 「暑くない」と言われても、時間を決めて冷房・扇風機を使う声かけを
  • のどが渇く前に、コップ1杯をこまめに。食事にも水分を添えて
なぜ室内で気づきにくいのか
  • 年を重ねると、暑さやのどの渇きを感じにくくなると言われています
  • 「電気代が気になる」「体に良くない」と、冷房を我慢しがち
  • 温度計・湿度計を見る習慣がないと、危険な暑さに気づけない

※ 持病のある方は、主治医や看護師の指示を優先してください。

03
特集
特集室内熱中症の見守り ②(いざという時の対応)TOBATA OTANIEN|2026.07
こんな時は、すぐ救急相談・119番へ
  • 意識がおかしい(呼びかけへの反応が鈍い・ぼんやり・けいれん)
  • 自分で水分がとれない/吐いてしまう
  • 体が熱いのに汗をかいていない・まっすぐ立てない・強くふらつく

判断に迷うときは、救急安心センター事業「#7119」に相談できます(対応地域)。急な変化は、ためらわず119番へ。

その場でできる応急 ―― まず涼しく、体を冷やす

  1. 涼しい場所へ…冷房の効いた室内や日陰へ移し、衣服をゆるめて楽な姿勢に
  2. 体を冷やす…右図の首の横・わきの下・脚の付け根(太い血管が通る所)を保冷剤やぬれタオルで冷やす
  3. 水分・塩分…受け答えができるなら、経口補水液などを少しずつ
  4. 助けを呼ぶ…ひとりにせず声をかける。飲めない・吐く・反応が鈍い時は飲ませず、すぐ救急へ
体を冷やす3か所(首の横・わきの下・脚の付け根)

体を冷やすとよい3か所。太い血管が通る場所を冷やすと効果的です

ご家族・ご本人に伝える一言

「暑さは我慢しないで大丈夫ですよ。のどが渇く前の一口と、時間を決めた冷房で、この夏も元気に過ごしましょう」——遠慮しがちな方には、こう声をかけると安心につながります。ご家族にも、こまめな声かけと見守りをお願いしておくと安心です。

冷やしたあとも、ひとりにしない

応急のあとに急に悪くなることもあります。受け答え・汗・顔色・体温を続けて見守り、良くならない・くり返す時は早めに受診を。ご家族にも「様子が戻っても、しばらくは見ていてください」とひとこと添えると安心です。

申し送りにそのまま書ける文例

「室温・湿度と飲水量を毎日確認。倦怠感・食欲低下・ふらつきの有無を観察。エアコン使用状況を家族と共有し、変化時は受診勧奨。」 水分・塩分の摂取量や冷房の使用時間も添えておくと、次の担当への連携がスムーズです。

04
東洋医学
連載東洋医学の視点 ①TOBATA OTANIEN|2026.07
02

SERIES|理学療法士 × 鍼灸師の目で

夏の疲れを「気血」で読みとく

ここからは、鍼灸師としての東洋医学の視点を加えます。東洋医学では、夏の強い暑さは「気(き=体を動かすエネルギー)」と「津液(しんえき=体のうるおい)」を消耗させ、だるさ・食欲の落ち・寝つきの悪さにつながると考えます。「二つの目」で見ると、夏バテの背景(消耗)と、日々の養生の両方に気づけます。

理学療法士の目

暑さで活動量が落ち、水分不足からくる血圧の変動・ふらつき・筋力低下として現れていないかを、動きと数値で見ます。

×
鍼灸師の目

同じだるさを、汗による「気」と「うるおい」の消耗のサインと見立て、消耗を補う養生とめぐりを整える視点で見ます。

「気・血・水」で読みとく

体は「気・血・水(き・けつ・すい)」の3つがめぐって保たれると考えます。夏は汗とともに気とうるおいが失われやすく、めぐりが細くなると、だるさ・動悸・寝つきの悪さとして現れると言われています。

気血水の図

気・血・水がめぐって体を保つ

五臓と季節(夏=心)

夏は五臓の「心(しん)」が高ぶりやすい季節と考えます。あわせて「脾胃(ひい=胃腸)」は気血をつくる大もと。冷たい飲食で脾胃を冷やさないことが、夏の養生の基本です。

五行と五臓の対応(夏=火・心)

五行と五臓。夏=火・心(しん)

今月の東洋医学ミニ用語|気虚(ききょ)

気(=元気・エネルギー)が不足した状態を指す言葉です。夏は汗で気を消耗しやすく、「疲れやすい・食欲が落ちる・声に力が出ない」といった様子で現れると考えられています。休息と、次のページの養生が助けになると言われています。※ 東洋医学の考え方の紹介です。持病・服薬中の方は主治医・鍼灸師にご相談ください。

05
東洋医学
連載東洋医学の視点 ② ― 夏のツボ養生と食養生TOBATA OTANIEN|2026.07
おうちでできる夏の養生のツボ

夏の疲れやだるさ、寝苦しさには、道具のいらないツボ養生も助けになると言われています。ご本人と一緒に、心地よい所から試してみてください。

夏の養生に使うツボの位置図(神門・承山・中脘)

図はおおよその位置。正確な位置は下の説明を

  • 神門(しんもん)/手首のしわ・小指側のくぼみ/夏に高ぶりやすい「心」を落ち着け、寝つきの養生に
  • 承山(しょうざん)/ふくらはぎの中央・アキレス腱の上のくぼみ/足のつり・脚の疲れやだるさに
  • 中脘(ちゅうかん)/みぞおちとおへその中間/冷たい飲食で弱りやすい胃腸を整える養生に

押し方=気持ちよい程度に、息を吐きながら5秒ほどゆっくり。強く揉みません。妊娠中の方、血が止まりにくい方、皮膚に傷や異常がある部位は避け、持病・服薬中の方は主治医・鍼灸師にご相談を。ツボは薬の代わりではありません。

夏の食養生 ― 熱をさます+胃腸にやさしく
  • 熱をやさしくさます:冬瓜・苦瓜・きゅうり・トマト・すいか
  • 気とうるおいを補う:米・いも・豆・かぼちゃ/梅干し(塩分補給にも)
  • 冷たい物ばかりは胃腸を弱らせます。常温・温かく調理・よく噛んで腹八分を心がけて
症状別|このツボから
  • 寝つきが悪い・気が高ぶる → 神門
  • 足がつる・脚がだるい → 承山
  • 食欲が落ちる・胃が重い → 中脘

まずは1つ、心地よい所から。

水分・塩分のとり方の目安

こまめに(のどが渇く前に)コップ1杯を。たくさん汗をかいた時は、水分に加えて塩分も。経口補水液や、麦茶+少量の塩・梅干しなどが手軽です。

※ 心臓・腎臓の病気などで水分・塩分の制限がある方は、必ず主治医の指示を優先してください。

ツボ養生の Q&A

Q. いつ・どのくらいが目安?

A. 体が温まった入浴後が向いています。1か所、息を吐きながら5秒ほどを2〜3回。心地よい圧で、痛がる時・発熱時・飲酒後は避けて。

06
セルフケア
今日からできる涼しく過ごす工夫TOBATA OTANIEN|2026.07
03

SELF CARE

セルフケアと室内環境の整え方

暑さを避ける小さな工夫
  • 暑い時間は涼しい部屋で。カーテン・すだれで直射日光を防ぐ
  • 「冷房が苦手」な方は、設定を高めにして扇風機と併用。冷えすぎない風の当て方を
  • 入浴・外出の前後は、いつもより多めの水分を
涼しく過ごす一日の工夫(例)
  • …起きたら一杯の水。窓を開けて室内の熱をこもらせない
  • 日中…暑い時間は無理に外出せず、涼しい部屋で。カーテンで日差しを調整
  • …寝室も冷房・扇風機で。寝る前と起きた時にもコップ一杯
座ってできる軽い運動(涼しい時間に)
座ってできる軽い運動(足首の上げ下げ・肩まわし・深呼吸)

左から 足首の上げ下げ(脚のむくみ・血のめぐり)/肩まわし(肩・首のこわばり)/深呼吸(のぼせ・気の高ぶりを鎮める)

無理のない範囲で。痛み・強い息切れがあれば中止し、主治医の指示を優先してください。

現場で使える「室内環境チェック」 ✂ コピー・切り取って、申し送りや見守りに持ち歩けます
室温は28℃以下になっているか
湿度は70%以下か(湿度計はあるか)
冷房・扇風機を時間を決めて使えているか
水分がすぐ手に取れる所にあるか
今日の飲水量・食事量は落ちていないか
顔色・受け答え・元気はいつも通りか
寝室・トイレ・浴室など暑くこもる場所はないか
家族と冷房の使い方を共有できているか
07

ご相談・多職種連携のご案内/コラムへのご要望

INFORMATION
ご利用者のことで気になる時は

気になる変化があれば、主治医・看護師・ケアマネのみなさまと一緒に、園の理学療法士・鍼灸師として体の状態を確認します。転びにくい動き方や声かけのコツも、どうぞ一緒に。あくまで、みなさまの見守りを支える一員として関われれば幸いです。

コラムのご要望 リクエストフォームQR
お問い合わせ・連携のご相談
戸畑大谷園(担当:村田 幸俊)
TEL:093-883-0622
QR=コラムのご要望・取り上げてほしいテーマ受付
読者Q&A

Q. 「暑くない」と言ってエアコンを使ってくれません。

A. 高齢の方は暑さを感じにくいことがあります。「暑いから」ではなく「時間を決めた習慣」として「昼の◯時〜◯時はつけましょう」と一緒に決めると受け入れられやすく、温湿度計を見える所に置くのも一つの方法です。

📮 ご質問・ご要望を募集しています

取り上げてほしいテーマや日ごろの疑問を、上のQR(または戸畑大谷園)へお寄せください。いただいた声は次号以降でお答えします。みなさまと一緒に育てていく通信です。

編集後記

創刊号をお届けできて、ほっとしています。「室内なのに熱中症で…」という声を毎年うかがいます。この一枚が、みなさまの見守りの小さな助けになればうれしいです。(村田)

こまめな水分と見守りで夏を元気に
こまめな水分と見守りで、この夏も元気に。
戸畑大谷園 特別養護老人ホーム/デイサービス
TEL 093-883-0622
〒804-0032 北九州市戸畑区西大谷1-6-22/発行 戸畑大谷園・2026年7月1日(創刊号・毎月1日発行)/執筆・監修:村田 幸俊(理学療法士・鍼灸師)/次号予告:かくれ脱水の早期発見(予定)
創刊号 室内で起こる熱中症の見守り / 過去号は右のQR(バックナンバー)から
バックナンバーQR
📚 バックナンバー
はこちら